ヨーロッパ・アメリカ

不思議な魅力をたたえた国、スロバキアを探訪

面積は約4.9万平方キロメートルと、日本の7分の1程度しか国土がない中欧の小国「スロバキア」

10~20世紀まではハンガリー王国の一部として、また第2次世界大戦以降はチェコスロバキアとして存在した同国は、完全に独立を果たしたのが1993年のことという、まだとても若い国です。

その首都は、ドナウ川のほとりに中世のたたずまいを残す「ブラチスラバ」

ハンガリー王国の首都でもあったブラチスラバをはじめ、スロバキアには“昔のヨーロッパらしさ”を感じさせる町が多くあり、国内外からの登山客・スキー客でにぎわう山岳部と併せ、同国の主な観光地となっています。

…と、スロバキアの概要についてまとめてみましたが、率直に言って“余り馴染みのない国”というのが、多くの日本人が抱く率直な感想ではないでしょうか?

私自身もスロバキアに足を運んだのは、同国の西端に位置するブラチスラバがオーストリア・ハンガリー・チェコなどとの境界に近く、立ち寄りやすいと考えたからです。

そのためじっくりと時間を掛けて観光したというより、ブラチスラバの街を散策した…という程度の滞在ではあったのですが、スロバキアは何とも不思議な魅力をたたえた国で、結果的にすっかり心を奪われてしまいました!

そのときの様子がどのようなものであったか旅行記にまとめましたので、お付き合いください。

マリア・テレジアの居城、ブラチスラバ城へ!

前述のとおり、隣国との境界にほど近いブラチスラバ

ことオーストリアの首都であるウィーンとは、60km程度しか離れていません。

ウィーン国際空港からブラチスラバ市内まではわずか45 km程度で、空港-ブラチスラバ市内間を3路線の定期バスが運行中。

所要時間は約45分~1時間、片道約5-8ユーロというのですから、日帰り旅行も十分に可能です。

加えてブラチスラバ周辺の主な見どころはコンパクトにまとまっているため、短い時間であっても観光を楽しむことができるでしょう。

ちなみに私の場合は、ハンガリーから観光バスでスロバキアを目指しました。

途中、川を挟んでこちら側はハンガリー、あちら側はスロバキアという景色を見て、島国の日本ではありえないことですから、何だかとても新鮮な気持ちになります。

スロバキアに関しては余り知識がなく、実を言うと“ブラチスラバ”という首都の名前も旅の計画を立てているときに初めて知ったのですが、一体どのような国なのか、移動しながら期待が高まりますね。

ほどなくして、私を乗せたバスはスロバキアに到着。

ふと気になって調べてみると、その国名は6世紀に定住していたスラブ人に由来し、スロバキアとは“スラブ民族の地”という意味なのだとか。

そしてスラブとはゴート語でslov“口数の少ない人々”のことを指すらしく、どこか秘密めいていて、心惹かれるものがあります。

さらに面白いことに、スロバキアでは一年間のそれぞれの日について、あらかじめ決められた“人の名前”が割り振られており、その日はその名前の人を祝福する「名前の日(メニニ)」と呼ばれる慣習が見受けられるようですね。

こちらの慣習も、非常に興味深いと感じました。

さてスロバキア到着後にまず向かったのは、戦略的な要衝として、紀元前のケルト時代から城が築かれてきた場所に立つ「ブラチスラバ城」です。

15世紀に全面的に改築され、トルコへの防備を固めていったブラチスラバ城は、16世紀にはハンガリー王国の首都となったブラチスラバの象徴的存在に。

4隅に塔が立つ独特な外観のため、“ひっくり返したテーブル”とも呼ばれています。

なるほど城を見上げてみると、まさしくちゃぶ台をひっくり返したような形をしていますね。

18世紀の女帝マリア・テレジアの時代には、ハプスブルク家の宮廷としてふさわしい姿とするために更に手が加えられ、黄金時代を迎えたこちらのお城。

しかしながら19世紀には火事によって荒廃し、20世紀に修復され、現在に至ります。

20世紀に再建された城とあって古城のような趣は感じられませんが、その重厚なたたずまいを眺めながら移ろいゆく時代の流れに想いを馳せるのも、また一興。

巨大ながらどこか可愛らしく、それでいて純真な子どもが絵に書いたようにシンプルな外観にも、魅力を感じました。

ブラチスラバ旧市街でのユニークな出会い

ブラチスラバ城を後にして、続いてはブラチスラバの旧市街を散策します。

旧市街の街並みは、どこを切り取ってもまるで絵画のよう。

ただ華美な印象はなく、とても素朴で温かみがあり、心を掴まれました。

ブラチスラバに限らず、東欧・中欧諸国の街並みには、独特な魅力がありますね。

どちらが良い悪いというわけでもないのですが、イタリアなどの洗練された雰囲気とは、全く異なる趣をたたえています。

数百年前にここで暮らした人々もほぼ同じ景色を見ていたのではないかと思わせる、良い意味で飾らない風景。

おとぎの国に迷い込んでしまったようでもあり、ワクワクすると同時に、心癒されていきます。

ゆっくり散策しなければ見落としてしまいそうな細い路地も、とても素敵。

そこを抜けるとどのような街並みが広がっているのか、気になってしまいます。

街角にちょこんと腰かけて、楽器を演奏している人の姿も。

まるで、映画のワンシーンのようです。

一つでも多くの画になる風景を心に刻んで帰ろうと、気付けばキョロキョロしながら歩いていました。

加えてブラチスラバの旧市街には、とてもユニークな特徴が見られます。

街のそこかしこに、愛嬌たっぷりの銅像が点在しているのです!

マンホールから上半身を出して笑顔をみせる「チュミル像」は、この街でも特に有名な人気者。

その傍ではチュミル像の姿形を真似て、顔に色を塗り同じポーズをとっている男性の姿もあり、最初は彼のことも本物の銅像として眺めていたため(笑)、驚いてしまいました。

しかし、笑顔で写真に応じてくれましたよ^^

東欧・中欧諸国の観光地には、このようなストリートパフォーマーの方たちが多くいらっしゃいますね。

今回のように銅像に扮する方、民族衣装のようなものを身にまとって笛を吹く方、中世の騎士を思わせるコスプレを披露する方、何か強いメッセージ性があると思われる強烈なパフォーマンスに打ち込む方…。

見入っていると、彼らの多くが笑顔で話しかけてくれ、一緒に写真を撮るなどしてくれました。

一方でイタリアのローマにて同じようなパフォーマーを見掛けた際には、いきなり体を引き寄せて写真を撮られた後に割と高額な金銭を要求されたので、同じヨーロッパでも事情が異なるのでしょう…。

チュミル像の他には、カメラを構えるパパラッチ風の銅像が特に目を引きましたね。

なおその銅像の傍には「パパラッチ」と名付けられたカフェがあり、店頭にU2のボノとナオミ・キャンベルが戯れる写真がドーンと飾られていましたよ。

遊び心があるし、とてもセンスが良いと思いませんか?

もう一つ未だに忘れられないのが、旧市街にあったどこかの建物の軒下のような場所に、不思議なおじさんの像がひょっこりと顔をのぞかせていたこと。

あのおじさんは妖精なのか、小人なのか…。

たまたま目に入らなければスルーするくらいの小さな像でしたが、不思議な魅力を感じ、しばし見入ってしまいました。

ブラチスラバ旧市街では、このようなユニークな出会いの数々を楽しむことができたのです。

そんなこんなで、とても不思議で謎に満ち、と同時にどこまでも魅力的なスロバキア・ブラチスラバの旅でした。

今回は余り予備知識もなく訪れてしまったので、いつかまたスロバキアについてもっと学んだうえで、再度街歩きを楽しみたいですね。