佐賀県の西部にある市、「武雄市」。
佐賀市と長崎県佐世保市の中間に位置するこちらの町には、開湯以来1300年の歴史を誇る武雄温泉をはじめ、数々の心癒されるスポットがあります。
その一方で、蔦屋書店やスターバックスが併設されていると全国的にも注目を浴びた「武雄市図書館」を2013 年にリニューアルオープンさせるなど、先進的な取組にも注力する、非常に興味深い街ですね。
私は初め、「チームラボ」が手掛けるデジタルアートプロジェクトが開催されていると知ってこの地を訪れたのですが、以降町の魅力にすっかり心を奪われ、折に触れてこの地へ足を運ぶようになりました。
そこで今回は武雄市の面白さについて、具体的にお伝えしてみたいと思います。
殿様気分で武雄温泉を堪能!
まずご紹介するのは、1300年前に書かれた肥前風土記の中にも記述がある「武雄温泉」です。
透明で柔らかな湯ざわりが特徴で、古くはかの神功皇后も入浴されたとか。
さらに、歴史上名高い宮本武蔵・シーボルト・伊達政宗・伊能忠敬らが入浴したとの記録も残されていますね。
温泉の入口に立つ朱塗りの楼門「天平式楼門」は、竜宮を連想させる鮮やかな色彩と形をしており、釘を一本も使用していない点が特徴的です。
平成15年に復元された武雄温泉新館とこちらの楼門は、東京駅を設計した辰野金吾博士の設計により大正4年に建てられたもので、平成17年には国の重要文化財にも指定されました。
なお武雄温泉のお湯はふと立ち寄って、日帰りで味わうことも可能。
幾つかのお風呂があるのですが、私はいつも貸し切り湯の「殿様湯」「家老湯」のいずれかを利用しています。
「殿様湯」は江戸時代中期に領主・武雄鍋島氏の専用風呂として造られた、総大理石の見事なお風呂。
江戸参府紀行には、武雄を訪れたシーボルトが殿様湯に入浴した様子が紹介されています。
殿様湯の内観は由緒を感じさせるものでありながら、どこかモダンな雰囲気も。
殿様が専用風呂として使用したこちらの空間を貸し切り湯で独り占めできるとは、何とも贅沢な気分です。
お風呂の隣には4畳半と3畳の控室も用意されており、心ゆくまで温泉を堪能することができますよ^^
一方の「家老湯」は殿様湯の隣に位置する、家族連れにも人気があるお風呂。
殿様湯のように華美な印象はありませんが、こちらも十分に立派な造りで、4畳半の控室も備えていることから、ゆっくりとくつろぐことができます。
泉質はさまざまな成分が程よく入った弱アルカリ単純泉で、保温性に優れ、肌になじんでしっとりすため、“美人の湯”とも呼ばれている武雄温泉。
その素晴らしいお湯もさることながら、趣深い建物も、こちらの温泉の魅力です。
どこまでも魅力的な“楽園”に心捕らわれる
国指定記念物「御船山楽園」も、武雄を訪れたら必ず立ち寄りたいスポットです。
神功皇后が新羅からの帰りに御船をつながれたことに由来するという武雄のシンボル、標高210メートルの御船山。
その断崖を借景に、時代の領主・鍋島茂義が約3年の歳月をかけて1845年に完成させた15万坪を誇る壮大な池泉回遊式庭園が、御船山楽園です。
こちらの庭園においては、広大な敷地を埋め尽くす数十万の木や花々が四季折々に色づき、訪れる者を楽しませてくれます。
私は全ての季節に足を運んでみましたが、とりわけ印象的だったのは、“御船山楽園が最も美しく輝く季節”とも称される春の景色でしょう。
広大な庭園を隙間なく彩る、つつじ・大藤・春もみじ。
中でも御船山楽園の最大の見どころと言える、すり鉢状をした「つつじ谷」の眺めは圧巻です!
色とりどりのつつじで織られる、まるで絨毯を敷き詰めたかのような絶景。
後ろにそびえたつ御船山の堂々たる風格も相まって、ずっと眺めていたい気持ちにさせられます。
こういった古より続く“日本人の心”に訴えるかのような風景が楽しめる一方で、数年前から御船山楽園にて展開されている、世界で活躍するウルトラテクノロジスト集団「チームラボ」によるデジタルアートプロジェクトの数々も、見逃すことができません。
名勝地・御船山楽園が誇る大庭園が、チームラボの仕掛ける“自然が自然のままアートになる”プロジェクトの作品群と人々の存在によって、変容し続ける空間へと様変わりするのです。
私は夏の夜、毎年のように訪れているのですが、御船山楽園にある池の水面にプロジェクションする作品「小舟と共に踊る鯉によって描かれる水面のドローイング」の模様は、余りにも幻想的。
水面はセンシングされ、映像は池に浮かんで進む小舟とともに、インタラクティブに変化していきます。
小舟が静かに浮かんでいると周りに集まり、小舟が動き出すと避けていく、光り輝く無数の魚の映像。
その魚の群れの動きが軌跡となり、壮大なスケールで紡がれていくアートを鑑賞していると、まるで夢の中を漂っているような心持ちになりますね。
チームラボによる一連のデジタルアートプロジェクトは年々進化を遂げているようですし、引き続き目が離せません。
ただ一点、花の時期も同様ではあるのですが、チームラボのイベントなどが実施されている間の御船山楽園は、想像以上に込み合います!
近隣の駐車場からバスで庭園の入り口まで輸送してもらえるため、どこにも車を停める場所がなくて動けない…といった事態にはならないものの、年間を通して様々な見どころがあり、多くの観光客でにぎわう御船山楽園を訪れる際には、時間にある程度の余裕を持たせるなど、相応の心づもりをしておくと良いでしょう。
さて続いては、「武雄市図書館」について記したいと思います。
平成25年からカルチュア・コンビニエンス・クラブ会社によって運営されている、こちらの図書館。
従来の図書館サービスはもちろん、蔦屋書店が併設されているため本を購入することが可能ですし、館内にはスターバックスもあり、コーヒーを飲みながらゆったり読書ができるという夢のようなスポットです。
図書の貸出には当然利用カードが必要となりますが、従来の図書利用カード発行に加えてTカードへの図書貸出機能の付与も実施されており、日本国内に居住していれば誰でもカードが作れるというのも嬉しいですね。
そのため武雄市図書館はいつも、観光客と思しき人たちも含めて大賑わい!
実際に数えきれないほどの本が整然と並べられた内部の様子も画になりますし、遠方からであっても、わざわざ足を運ぶ価値があるスポットと言えるでしょう。
しかしながら利用者の方のプライバシーを保護するため、館内での写真撮影は基本的に禁止されています(館内のフォトスポットにおいてのみ、撮影が可能)。
幾らオシャレと言っても、こちらはインスタ映えが狙えるカフェなどではなく、あくまでも図書館ですからね;
実際に私が読書好きの武雄市民だったとしても、余りにも騒がしいと通常の図書館として利用することは難しくなるでしょうし、マナーを守って訪れることが必須だと思いました。
歴史を感じる情景に、心癒される美しい自然、革新的な施設やイベントの数々…。
一人旅で足の向くまま気の向くままに散策するもよし、家族や友達と一緒に観光するもよし。
武雄の地は、訪れる者のニーズに応えて様々な一面を見せてくれる、とても楽しく、また魅力にあふれた場所です。
この町に足を運び、自分らしいひと時を過ごしてみてはいかがでしょうか?