ヨーロッパ・アメリカ

様々な歴史を持つ国、ポーランドを訪ねる

つい先日、知り合い宅で何気なく、ヨゼフ・ウィルコンという方の本を手に取りました。

その独特の世界観に惹かれて著者について調べたところ、彼はポーランドの作家であり、日本で紹介されているだけでも実に100冊を越える絵本を発表しているのだとか。

現在はワルシャワ郊外の広い庭のある家に住み、豊かな自然と多くの動物たちに囲まれて暮らしているそうです。

さて彼のメッセージを読み進めていくと、その活動の根底には自らの故郷に対する深い愛情や、郷愁のようなものがあると感じられました。

おそらくヨゼフ・ウィルコンは複雑な歴史も含めて、ポーランドという国を心から大切に思っているのです。

地政学的・文化的に東西ヨーロッパの懸け橋としての役割を果たし、ゆえに多くの苦難に見舞われながら、だからこそ唯一無二の魅力をたたえる国、ポーランド。

一冊の本との出会いを通じ、ポーランドを旅したときのこともふと思い出されたので、今回の記事にまとめてみたいと思います。

古都クラクフでポーランドの歴史に思いを馳せる

ポーランドは“Heart of Europe”とも言われる、ヨーロッパの中央に位置する国です。

国名の語源は「平原」からきていて、その名のとおり限りない大平原が広がる大地には、今なお手つかずの大自然が。

一方でポーランドは豊かな歴史と伝統を持つ国でもあり、歴史的遺産の旅は一大ブームとなっています。

ただ日本でポーランドを訪れたことがあるという方は、意外と少ない印象ですね。

中欧周遊ツアーなどのラインナップを見ても、ポーランドが入っていないケースが多いような気がします。

ともあれポーランドは十二分に、訪れる価値のある国です。

さて私はポーランドを旅行した際、その古都「クラクフ」を中心に観光しました。

ポーランドの南部に位置する、ワルシャワから特急列車で約3時間のクラクフは、“ポーランドの京都”とも呼ばれるように、かつてポーランド王国の首都として繁栄した街です。

その旧市街には今もなお中世の頃の街並がそのまま残っており、1978年には世界遺産に。

なお世界遺産の登録が始まった年自体が1978年で、ポーランドの「クラクフ旧市街」は、その栄誉ある最初の登録地の一つに選ばれたのでした。

ワルシャワに首都の座を譲った今も文化・芸術・学問の都として栄え、ヨーロッパで最も美しい都市の一つに数えられているクラクフ。

町の中心にはヨーロッパ最大の広場「リネク・グウヴヌィ」があって、その周辺にはオシャレなカフェや屋台、みやげもの店などが幾つも立ち並び、多くの人々が行き交っています。

私は広場のマーケットにて、お花の刺?が施された素朴な魅力のハンカチを購入。

まるでクラクフの街のように美しさの中にも可愛らしさが見られ、それでいて品を感じる、とても素敵なハンカチです。

北東の角にあるひときわ目を引く建物は、「聖マリア教会」

ゴシック様式の聖堂の内部にはヴィト・ストフォシュ作の木彫による見事な聖壇が据えられているのですが、こちらは中世から残るものとしてはヨーロッパ最大のもので、国宝にも指定されています。

ちなみにクラクフは学生都市でもあり、12校もの高等教育機関においては10万人以上の学生たちが学んでいるそうです。

なるほど街ゆく人に若者が多いとは感じていましたが、そのような理由があったのですね^^

まるでモデルのようにスラリとした美人が多いのも、とても印象的でした。

さてクラクフの代表的教育機関である1364年創立の「ヤギェウォ大学」は、ヨーロッパ最古の大学の一つであり、中欧ではプラハのカレル大学に次ぐ歴史を持っています。

コペルニクスや若き日の故ヨハネ・パウロ2世も、こちらの大学で学んだのだとか。

またヤギェウォ大学には「コレギウム・マイウス」という中世から残る建物があって、誰でも内部を見学することができます。

私は時間の関係で内部まで入ることはできませんでしたが、外から眺めることが可能な仕掛け時計があるとのことで、人形が出てくるタイミングを待つことに。

周囲には私以外にもたくさんの観光客がいらっしゃり、建物の壁を見上げながら、仕掛け時計の演出に期待を膨らませている様子でした。

ほどなくして、可愛らしい人形たちが内部から登場。

皆で歓声を上げながら楽しみを共有する、素敵な時間が流れていきます。

なお演出の最後には窓から本物の人が顔をのぞかせたのですが、横で見ていた方が「ものすごく良くできた人形だな」と感心しており、思わずクスリときてしまいましたね^^

ここまでに挙げたスポットのみならず、クラクフは街全体が本当に美しくて、数々の教会や長い歴史がそうさせているのか、何とも言えない荘厳な空気をもたたえています。

“特別な場所”であることを、肌で感じることができるのです。

今回の旅ではやはり時間が足りず巡ることは叶いませんでしたが、美術館や博物館もたくさん見掛けました。

興味深い展示も行われていたので、もっとゆっくり見て回ったら、更なる感動があったに違いありません。

“負の遺産”を目の当たりにする

ポーランドではクラクフに続き、ワルシャワ、ザモシチ、トルンの各旧市街も世界遺産のリストに登録されました。

ワルシャワの旧市街が指定を受けたのは、第二次世界大戦後の市民の手によって、かつての街並が見事に再建・再現されたことが評価されたものです。

一方でポーランドには、その他の場所とは全く異なる“負の遺産”もあります。

それこそが、第二次世界大戦中にナチスの手によって無数のユダヤ人、ポーランド人、ロマたちをはじめとする様々な人々が殺される悲劇を目撃した場所「アウシュヴィッツービルケナウ強制収容所」ですね。

私はアウシュビッツ第2強制収容所(ビルケナウ)まで見て回りましたが、途中で足を進めることができなくなる方も大勢いらっしゃるそうです。

確かにアウシュビッツには今も当時の痕跡が生々しく残されており、胸がいっぱいになりました。

建物の外観は、映画「ライフ・イズ・ビューティフル」を思い出していただけると分かりやすいでしょう。

亡くなられた方の遺品の数々も、圧倒的なメッセージ性を持って見る者に迫ります。

多くのユダヤ人と思われる方が壁に貼り出された遺影のような写真に、小さな花を手向けている様子も印象的でした。

非常にセンシティブな内容のため、これ以上詳しく記すことは避けますが、とにかく物寂しい雰囲気の場所で、何だか景色もモノクロに見えてきて、色々と考えさせられるものがありましたね。

第2強制収容所がある広大な大地を目にしたとき、かなり遠くまで来たなぁと感じたものの、この地を訪れることができたのは意義深かったです。

そういったわけで、歴史的な背景にも思いを馳せながらのポーランドの旅は、数々の鮮烈な印象を与えてくれました。

ポーランドはショパンゆかりの地としても知られていますが、彼の紡いだ音楽から受ける印象と同様に、とても深く、色々な意味で複雑な魅力を持った国だと感じます。

とはいえ冒頭にも触れたとおりポーランドには、ヨーロッパのこの地域に残る最良の状態の原生林「ビャウォヴィエジャ国立公園」など、世界に誇る自然遺産も存在しています。

やはり一度訪れただけでは、その多面的な魅力のすべてに触れることは到底不可能ですね。

私はイタリアなどの観光地も訪れましたが、中欧特有の空気感にはかなり心惹かれるものがあるので、いつかまたポーランド再訪の機会に恵まれれば良いなと考えています。