西日本

天空の聖地・和歌山県高野山と、龍神温泉を訪ねる

旅行を趣味として様々な観光地を巡っていると、しみじみ“良いなぁ…”と感じ入ることができる場所と、急激に言葉にならないような感動が沸き上がってくる場所の、2パターンがあるように思います。

そして和歌山県の「高野山」は、完全に後者のパターンでした。

足を踏み入れるなり感想より先に心が揺れ動き、圧倒されるようにして、その土地の素晴らしさを肌で感じ取ることができたのです。

私はもともと和歌山県自体が大好きで、折に触れては様々なエリアに足を運んでいるのですが、今回の記事では高野山及びそこから連なる「龍神温泉」に対象を絞り、その魅力をたっぷりお伝えしたいと思います。

壮大なる聖地、高野山を歩く

標高約900mの山上盆地に広がる高野山は、弘法大師・空海が開いた日本を代表する真言密教の聖地です。

かつて弘法大師は密教の道場を開くのにふさわしい地として、都の喧噪から遠く離れた紀伊山地の雄大な自然に抱かれる、この場所を選びました。

実際に現在も高野山の周辺は街中とは違う、特別な空気をたたえているような気がします。

私は特に信心深いということはなく、信仰について特段の知識を持ち合わせているわけでもありませんが、近隣からの道のりも含めて、高野山を訪れること自体が何か特別な体験のように思えるのです。

ちなみに高野山へは、車と電車でそれぞれ何度か足を運びました。

電車の場合は大阪の難波から南海高野線に乗り、極楽駅で下車。

そこからは南海高野山ケーブルの極楽橋駅より山の上を目指すのですが、私は電車の乗り継ぎで途中1時間ほどタイムロスしてしまったことがあるので、具体的なスケジュールは事前に立てておいた方が良いかも知れません…。

さてケーブルの高野山駅に降り立ち、歩を進めながら一番に驚くのは、山の上に広がる街の大きさです。

山内には数々の名所や土産物店はもちろんのこと、バスが走り、郵便局もあって、本当に一つの街として機能しているのです!

ここまでの道のりがかなり長かったことと、先に訪れた比叡山のイメージが残っていたので、このような通常の生活も営まれる場所であったとは、なかなかに予想外で驚きました。

そんなわけでバスに乗り込み、幾つもの見どころを回ります。

なお高野山と言えば「金剛峯寺」というワードが浮かぶ方も多いと思いますが、総本山金剛峯寺という場合は、金剛峯寺だけではなく高野山全体のことを指すのだとか。

通常“お寺”といえば一つの建造物を思い浮かべますし、その敷地内を境内と呼ぶものの、「一山境内地」と称される高野山の場合は、山の至るところがお寺の境内地であり、また高野山全体がお寺なのです。

なるほど、一帯を覆う荘厳な雰囲気にも納得ですね。

そのような特別な山において、私が特に心を奪われた場所。

それは、高野山における信仰の中心であり、弘法大師さまが御入定されている聖地「奥之院(おくのいん)」でした。

正式なかたちでいえば、奥之院へは一の橋から参拝するべきとのこと。

これに倣い、私も一の橋から歩き始めます。

そしてここからの道のりが、本当に圧巻だったのです!

一の橋から御廟に至る約2キロメートルもの道のりには、おおよそ20万基を超える名だたる諸大名の墓石や、数々の祈念碑、目を引く形・大きさをした慰霊碑が、樹齢千年に及ぶ杉木立の中に、所狭しと立ち並んでいました。

誰もが知る歴史上の人物が眠る墓はもちろんのこと、パナソニックなどの大企業が建立したという企業墓も、奥之院を目指す者の目を引きます。

その威厳を示すように、墓の多くは非常にユニークな形をしていたり、とてつもなく巨大だったりして、思わず息をのみました。

しかし何よりも引き付けられたのは、樹海がたたえる何とも言えない不思議な空気です。

一の橋からの空気感は、高野山の他の場所と比べても、何か異質。

例えば伊勢神宮を訪れても凛とした空気に身が引き締まるのですが、高野山の雰囲気は、それとも少し違う気がしますね。

神秘的であるというか、何だかとても秘密めいているというか…。

一般の墓地とも、決定的に印象が違っているのです。

冒頭で“高野山は急激な感動が沸き上がる場所”と記しましたが、私がそういった感情に包まれたのは、この奥之院に連なる道すがらの出来事でした。

そして、やがて目の前に現れる、大師信仰の中心聖地「弘法大師御廟(こうぼうだいしごびょう)」

現在でも肉身をこの世にとどめ、深い禅定に入られており、私たちに救いの手を差し伸べていらっしゃるとの“入定信仰”を持つ、お大師さまの御廟所です。

現在も参られる方々を救い続けていると信じられるこの地には、日夜多くの参拝者が絶えません。

かくいう私も高野山がたたえる圧倒的な魅力と、余りの見どころの多さゆえに、何度も繰り返し足を運ぶこととなりました。

日本三美人の湯!龍神温泉を堪能

そういったわけで高野山だけでも数日の時間が欲しいところではありますが、近隣にある「龍神温泉」も、かなりオススメのスポットです。

高野龍神国定公園、日高川沿いに位置するこちらの温泉郷。

島根県の湯の川温泉、群馬県の川中温泉とならび、日本三美人の湯としても知られていますね。

高野山からは、高野山⇔龍神温泉を結ぶ全長42.7kmの山岳道路「高野龍神スカイライン」を通り、向かうことができますよ^^

こちらの道には、周辺の“紀州の屋根”とも呼ばれる護摩壇山を中心として、ブナなどの原生林が広がっており、10月下旬から11月上旬にかけては山全体が紅葉で色づきます。

ドライブにも最適ですが、その一方で冬季には各地点で積雪や凍結が見られるため、ご注意を。

私は一度、雪の影響で迂回路を通ることになり、到着時間が大幅に遅れて宿の方に迷惑を掛けてしまいました…。

周辺に見どころが多い場所ということもあり、旅行の際には時間に余裕を持っておく方が賢明ですね。

さてロケーションもさることながら、龍神温泉で特筆すべきは、その素晴らしい泉質です!

ナトリウム炭酸水素塩泉(重曹泉)のお湯に浸かると、たちどころに肌がツルツルとしてきて、“美人の湯”の名にふさわしい、贅沢なしっとり感も味わうことができます。

その他、冷え性・神経痛・肩こりなどにも効果があるそう。

ゆるりとお湯に浸かり、芯から体を温めていると、旅の疲れが癒えていくのを感じますね。

温泉巡りが大好きな私は、これまでに様々な温泉地へ足を運んだものの、龍神温泉のお湯はトップレベルで好みでした。

効能をしっかり実感できる割に、嫌なクセなどはなく、本当にオススメの温泉です^^

ちなみに私は奈良県の吉野から高野山を経て龍神温泉に至り、次の日の朝に那智勝浦へ向けて出発したのですが、紀南観光や釣りの帰り道に立ち寄って、日帰り温泉施設を利用するというのも一案でしょう。

龍神村内にはその他の温泉やキャンプ場、道の駅などもありますから、その時々の旅のプランに合わせて過ごしてみてください。

民族や宗教の違いに寄らず、全てを受け入れる寛容さをたたえながら、今も多くの人々の信仰を集めている高野山。

この地が刻んだ1200年を超える悠久の時の流れに思いを馳せつつ、山内に足を踏み入れていくと、心が澄み渡っていくような感覚を抱きます。

非日常の得難い時間を与えてくれる一方で、酸内に様々な施設や移動手段があり、参詣しやすいというのも有難いですね。

今回ご紹介した龍神温泉も含めて、この特別な地の魅力に、あなたも身を寄せてみてはいかがでしょうか?