西日本

不思議な魅力に夢中!?石切・生駒を散歩

特段鉄道に詳しいわけではないものの、かれこれ20年近く近鉄電車が好きで、近鉄に乗りたいがために、旅の行程を調整することもままあります。

一番のお気に入りは南大阪線ですが、車窓からの景色という点では、奈良線にも心惹かれるものがありますね。

特に石切駅から枚岡駅間の東大阪市を一望できる辺りは最高で、奈良から大阪に戻る道すがら、いつか石切駅で降りてじっくり夜景を堪能したいと考えていました。

そこで石切駅ついて情報を集めてみたところ、周辺が中々の不思議スポットであることが判明。

何でも駅近くには、占いの店ばかりが軒を連ねているというのだから驚きです。

その光景は、つげ義春さんの漫画「ねじ式」に登場する目医者ばかりの町さながらだとか…。

これは「ねじ式」のファンとしても、見逃すわけにはいきません。

そこでいつもは通り過ぎるばかりだった石切駅を目的地に、近鉄電車へ乗り込みました。

参道商店街を通り、“石切さん”を目指す

初めて訪れる地ということもあり、いったん夜景のことは置いておいて(笑)、昼間の石切駅で下車します。

調べてみると、ここ石切には“石切さん”と親しまれる神社があり、石切駅から神社に至る参道には、「石切参道商店街」として百数十店もの商店が軒を連ねているとのことでした。

実際に商店街へ歩を進めてみたところ、なるほど占いのお店がたくさん!

各店が大々的に掲げる“占い”“四柱推命”といった漢字がビッシリの看板も相まって、かなりの非日常感が醸し出されています。

私好みの光景を目の当たりにして、これは訪れた甲斐があったと高揚感を覚えながら、せっかくなので同行してくれた天王寺在住の友人と一軒のお店に入り、運勢を占ってもらいました。

生年月日などを伝えて鑑定してもらうと、不思議とこれがよく当たっていて!

友人も家族構成をズバリ言い当てられて、驚いた様子です。

信じない人は全く信じないでしょうが、何らかの“気づき”を頂く程度のスタンスで診てもらうにしても、占いとは中々面白いものだと感じます。

占いの結果について談義しながら更に商店街を進んでいくと、飲食店をはじめ、漢方薬・衣料品・日用品など、占い以外のお店もたくさん目に入ってきました。

戦後の混乱期に有志の集まりからスタ-トを切ったこちらの商店街は、神社の門前町として“神社と商店街の共存共栄”を目的とした相互協力により、神社とともに発展を遂げてきたそうです。

石切の名産品が並ぶ店頭を眺めているだけでも楽しいのですが、商品と同じくらい、ちょっとした看板の文言などが魅力的で、何度もクスリときてしまいました。

さすがは大阪と言いましょうか、狙っているのか大真面目なのか判断が付かないギリギリのラインを突いたキャッチコピーが町のあちらこちらに散見されて、とても面白いのです。

神社の公式サイトに目をとおすと、石切駅からの道のりは徒歩15分と案内されているものの、近隣を訪れる際には是非とも時間に余裕をもって出発し、参道商店街の魅力も味わってみてください。

今も古き商店の面影を残しながら、どこかユニークな印象も受ける、とても温かで素敵な商店街です。

そうこうしているうちに、生駒山麓に鎮座する“石切さん”こと「石切劔箭神社(いしきりつるぎやじんじゃ)」に到着。

難解な名称ですが、劔は剣の異体字、箭は矢を表しているらしく、“石を切る鋭い剣や矢”との意味を持つ石切劔箭神社は、腫れ物を治す神様として、全国的にもその名を知られています。

本殿前に根差す樹齢約470年のくすの木は、東大阪市の天然記念物。

ここまでの道のりは少々“不思議スポット”の様相を呈していたものの、石切劔箭神社自体は大変由緒ある古社なのです。

年間およそ100万人が参拝に訪れるというこちらの神社は、本殿前でお参りして入口に戻り、再び本殿前でお参りすることを百回繰り返す「お百度参り」でも有名。

しかしこれは決して強制されるものではなく、百回でなくとも自分で決めた回数を行き来しながら、神様に願いが届くよう一心にお参りすることこそが大切なのだそうです。

生駒山頂から夜景を堪能!

“石切さん”にお参りするひと時が非常に濃いものであったため、夜景観賞は仕切り直すことに。

後日、奈良からの帰りに石切駅で降りる予定を立てたのですが、石切には停車しない、大阪市内まで10個以上の駅を飛ばす電車にうっかり乗ってしまい(笑)、リベンジは果たせませんでした。

そこでもうガッツリ夜景観賞にのみ時間を割こうと考えた私は、標高642mの生駒山頂を目指すことを決意。

再び天王寺在住の友人を伴って、今度は石切の隣、奈良県の生駒駅に降り立ったのでした。

生駒駅から80mほど歩き、近鉄生駒ケーブルの鳥居前駅に到着。

大正7年に鳥居前駅から宝山寺駅間が開通した生駒ケーブルは、日本で最初にできた営業用のケーブルカーです。

昭和4年には今回私たちが目指す生駒山上遊園地の開業に合わせて、宝山寺駅と生駒山上駅をつなぐ路線も開業。

宝山寺へ向かう参拝者の方々をはじめ、多くの人たちに重宝されてきました。

その長い歴史もさることながら、生駒ケーブルを利用する際に注目したいのが、何ともユニークな姿をした4つの車両です。

宝山寺駅まで送り届けてくれてくれるのは、犬型の車両「ブル」と猫型の「ミケ」。

生駒山上駅まで行くには宝山寺駅にて乗り換えが必要なのですが、その先の道のりも、オルガン型の「ドレミ」及びケーキ型の「スイート」というメルヘンチックな車両が導いてくれます。

これらの外観は子どもならずともワクワクするもので、思わず何枚も写真を撮ってしまいました。

さて宝山寺駅で一旦ケーブルカーを降りた後は、石畳の道を徒歩で10分程進みます。

宝山寺の門前町に当たるこちらの参道は、大正初期から昭和の中頃にかけて、大変な賑わいをみせたそう。

当時に比べると今は静かなまち並みが続いているのですが、料理旅館だった建物を改装したお店など、かつての面影を随所に垣間見ることができて、何とも言えない情緒があります。

加えて様々な歴史をたどったこともあってか、周辺は秘密めいた雰囲気すらたたえており、ゾクっとするような魅力を感じますね。

実を言うとこの辺りにはもう随分足を運んでいないものの、この文章を書きながら、近いうちに足を運びたくなってきました(笑)

生駒ケーブルや門前町の町並みを堪能したあとは、生駒山の中腹にある山岳寺院「宝山寺」へ。

こちらは約300年前に江戸時代の僧である湛海律師が中興して寺院を造営したもので、“聖天さん”と親しまれており、市外からも多くの観光客が訪れています。

昔ながらの風情がある参道と併せて、“山間の特別な空間”といった雰囲気の境内に、しばし心を捕らわれました。

その後再びケーブルカーに乗り、生駒山上駅から更に10分程歩いて、いよいよ生駒山上遊園地「スカイランドいこま」に到着です。

こちらも1929年に開園した、歴史ある遊園地ですね。

そのロケーションは、奈良盆地や大阪平野を一望し、視界の良い日には遠く淡路島や明石海峡大橋まで見渡すことができるという最高のもの。

夏はナイター営業を行っているため、夜景を楽しむこともできるというわけです。

遂に目にした生駒からの夜景は、とにかくだだっ広く、宝石箱をひっくり返したような光が幾つも瞬いており、胸がいっぱいになりました。

気温が平地より4~5℃低いということで、真夏というのに心地よい風が頬を撫でていきます。

この眺めの中で紡がれている幾つものストーリーに心を寄せながら、私の夜景ツアーは幕を閉じたのでした。

近鉄奈良線の眺望から、どんどん広がりをみせていった一連の旅。

夜景はもちろんですが、石切・生駒がたたえる独特な魅力も、かなり好みでしたね。

今後も一つのきっかけを見逃すことなく、色々な場所に出掛けていきたいと考えています。