皇室の御祖先であり、日本人の総氏神・天照大御神(あまてらすおおみかみ)をおまつりする全国神社の中心「伊勢神宮」(正式には“神宮”と言う。伊勢神宮は一般的な呼び方)。
“美し国(うましくに)”と称される山海の恵み豊かな地域・三重県伊勢市に鎮座するこちらの神宮は、全国約8万社の神社における最大の聖域、格別のお宮として崇敬を集めており、年間約800万人もの方がお参りされています。
“お伊勢参り”は江戸時代にも大流行したといいますが、その憧れと崇敬の心は今も受け継がれているわけですね^^
かくいう私もご多分に漏れず、一生に一度はお伊勢参りがしたいと願っていました。
そして大学を卒業する直前に初めて、念願のお伊勢参り及び伊勢志摩への旅行を実現することができたので、今回の記事ではそのときの様子をお伝えしたいと思います。
外宮から内宮の順にお参りを…
初の伊勢志摩エリアには、名古屋から近鉄電車に乗って向かいました。
別の機会に奈良方面から車で訪れたこともあるのですが、道がかなり混みあっていたので、電車を利用した方が安心かもしれません。
到着後にまず向かったのは、食物・穀物を司る神である“豊受大御神(とようけのおおみかみ)”をお祀りする「豊受大神宮 外宮(とようけだいじんぐう げくう)」。
実を言うと、伊勢神宮にはこちらの“外宮”、そして天照大御神をお祀りする「皇大神宮 内宮(こうたいじんぐう ないくう)」という、2つのお宮があるのです。
両宮は決して同格ではなく皇大神宮が最も尊いお宮で、神宮の中心。
そして、“お伊勢参りは外宮から”というのがならわしですね。
鳥居をくぐり、玉砂利を踏みしめながら外宮へ。
青い空に木々の緑が映えて、清らかな心持ちになります。
ちなみに外宮は1500年の歴史、内宮は2000年の歴史を誇るのだとか。
お宮そのものから感じられる力はもちろんですが、長い歴史の中でこの地を訪れた人々の信仰心を想うにつけても、感動に心が震えます。
その後は一度バスに乗り、天孫降臨を啓行(みちひらき)された“猿田彦大神”をお祀りする「猿田彦神社」へ。
神話好きとしては、こちらも絶対に足を運びたい神社でした。
清々しい空気に身を寄せて、時間さえあればいつまででもお参りできそうな気がしつつ、再びバスの乗り込み、いよいよ“内宮”へ向かいます。
古より総氏神のように崇められる天照大御神をお祀りした「皇大神宮 内宮」は、いわば日本人の“心のふるさと”とも称するべき場所。
その入口である宇治橋を一歩ずつ踏みしめて進むごとに、“神域”が近いという気配が伝わってくるようです。
寺社の境内に入ると、誰しもが何かしら外とは違う空気を感じ取るものと推察しますが、私は伊勢神宮を参拝した際、近隣に漂う“風”や日の“光”が通常よりもきらめいているように思われて、胸がいっぱいになりました。
理屈ではなくて、言いようもなく心が澄み渡り、自分を取り巻く様々な事象に対して感謝の気持ちが募ります。
様々な歴史や謂れを一旦置いておくにしても、素晴らしく気持ちの良い場所。
それが、伊勢神宮を訪れての率直な感想です。
玉砂利が敷き詰められた長い参道を歩き、いよいよ正宮の前に到着。
お参りする場所には“御幌(みとばり)”という白い布が掛けられ、門を開いたときに直接正面が見えないようになっているのですが、こちらの布が時折意志を持ったかのようにはためいて、神聖な息吹のようなものが感じられます。
古くからの風習に倣い、個人的なお願いよりも感謝の気持ちをお伝えして、正宮を後にしました。
ちなみに私はこの後にも家族と連れ立ってお伊勢参りにやって来たのですが、特に信心深いわけでもない父がお参りのあと、「内宮の岩の間から、かなり強い風が吹き出していた。中に大きな扇風機のようなものを置いていたのだろうか?」と話していたことをはっきり覚えています。
さすがに扇風機は置いていないと思うので、父もまた目には見えぬ何かの力に触れていたのかも知れません。
おかげ横丁と伊勢志摩の観光地を巡ろう!
お参りを済ませて立ち寄ったのは、伊勢神宮と切っても切れない名スポット「おかげ横丁」。
伊勢神宮内宮門前町の真ん中にあり、江戸から明治期にかけての伊勢路の代表的な建築物が移築・再現されたこちらの通りには、たくさんのお土産屋さんや料理店が立ち並んでいます。
神恩太鼓の演奏や紙芝居の口演なども催されていて、通りは連日観光客で大賑わい!
私はこちらで「伊勢うどん」や名物の「赤福」も堪能し、楽しい時間を過ごしました。
さらに足を延ばして、御祭神に猿田彦大神を祀り、開運や家内安全・交通安全に御利益があるという「二見興玉神社(ふたみおきたまじんじゃ)」にも向かいます。
正面の海に見える「夫婦岩」は、その沖合約700m先に鎮まる御祭神縁りの“興玉神石”と日の大神(太陽)を拝む、鳥居の役目を果たしているとか。
大小2つの岩が仲良く並ぶ姿はとても印象的で、夫婦円満や良縁成就を願う人々も多く訪れるそうです。
なお古くから伊勢神宮に参拝する人々は、こちらの二見浦で禊(みそぎ)をして、その後、外宮・内宮の順にお伊勢参りしたといいます。
二見浦は古来より“清渚”と尊ばれ、伊勢参宮を控えた人々が汐水を浴び、心身を清めた禊場だったのです。
二見浦に参詣して身を清めることを“浜参宮”といいますが、現在では禊をする代わりに神社に参拝して“無垢塩祓”を受けることを、浜参宮としていますね。
またかつては伊勢音頭の一節にて「お伊勢参らば朝熊をかけよ、朝熊かけねば片参り」と唄われたように、朝熊山の「金剛證寺」にも参詣するのが習わしだったとか。
二見からはじまって、外宮・内宮・金剛證寺とお参りし、昔ながらのお伊勢参りをしてみるのも良さそうです。
お伊勢参りに関連する場所以外にも、伊勢志摩にはまだまだ興味深いスポットが!
私はまだ行ったことがないのですが、世界で初めて養殖真珠が誕生した場所である「ミキモト真珠島」においては、真珠のことを詳しく知ることができるほか、ショッピングやお食事が楽しめます。
さらに、かつてアコヤ貝の世話をして真珠を育てた海女さんの作業を再現し、ここでしか見られない昔ながらの白い磯着を着た“海女の実演”を行っているらしく、友人から「絶対に琴線に触れるはずだから、海女の実演は観ておくべき!」と、かなり強くお勧めされていますね。
それほど見ごたえのあるショーならば、いつか見物に訪れたいものです。
なお今回の旅では電車に揺られるのも楽しく、近鉄名古屋駅から“しまかぜ”に乗って約2時間で到着する伊勢志摩サミット開催の地「賢島(かしこじま)」にも足を延ばしてきました。
英虞湾の島の中で最も大きい有人島である、賢島。
私が駅を降りたときは既に日暮れが近く、周辺にはほとんど人が見当たらなかったのですが、夕日にきらめく周辺の景色がこれまた幻想的で、夢の中にいるような錯覚を覚えつつ、帰路に就いた次第です。
そういったわけで、古来より多くの人々の信仰を集める神宮にお参りし、いつもに以上に意義深いものを感じた今回の旅でした。
この後にも伊勢には足を運んでいますが、人出が多く、お伊勢参りに関しては最初の一回が一番時間を掛けて参拝することができましたね。
とはいえ周辺にもまだ押さえきれていない見どころが多いため、いつかまた伊勢志摩観光には繰り出したいと考えています。
何度訪れても、新鮮な感動に包まれることができそうです。