ゴールデンウィークを利用して、中国南部の都市・桂林を旅した私。
帰国後に、次のお盆休みはどこへ出掛けようかと思案していたところ、“いっそもう一度、中国に行ってみよう!”との考えが頭に浮かびました。
今一番興味があるのは、中国の首都「北京」。
飛躍的発展を遂げた近代都市の風貌を見せながら、そびえたつ高層ビルに壮麗な宮殿や広大な庭園が調和し、また万里の長城や歴代皇帝の陵墓といった郊外に残る数多くの遺産も絢爛たる歴史を物語る、魅力にあふれた都市です。
史跡好きで、その時代が古いほど心惹かれる私にとっては、絶対に訪れたい場所。
調べてみると、旅行代金も安く抑えられそうだったため、早速旅の準備に取り掛かりました。
天安門広場と紫禁城の壮大さに圧倒される!
私が中国を訪れるのは香港・桂林に続く3度目ですが、同行者の母は今回の旅が初めて。
到着後に夜の街を歩き食事をとりに行く道すがら、中国らしい町並みや独特の雰囲気が既に素晴らしいと、早速感動している様子です。
次の日は世界最大面積を誇る広場、「天安門広場」へ。
夏の日差しが厳しく肌を刺しますが、周辺は何かお祭りが開催されているのかと感じるほどに、大勢の人でごった返していました。
広場の入り口では手持ちのものを一旦全部外し、セキュリティ・チェックを受けます。
広場自体の圧倒的なスケールはもちろん、何とも言えない非日常感に包まれて、心が高揚していきますね。
それを噛みしめるようにしながら進んだ広場の奥には、世界遺産の「故宮博物院」が。
明の永楽帝が改築し、明・清両王朝の皇城となった「紫禁城」を、博物館として公開したものです。
この故宮博物院という場所についても、とにかく“壮大”と形容するほかありません。
まずは何と言っても、広すぎる!
部屋は全部で9999もあるらしく、全てを見学しようと思えば、1週間は必要なのだとか。
そこに約100万点にも及ぶ貴重な文物が展示されているというのですから、まさに世界遺産中の世界遺産と称して良いでしょう。
今回の観光では幾つかの見どころを押さえながらも、基本的には端から端まで通り抜けただけなのですが、それでも休憩時間を除き、2時間半は要しました。
堂々たる紫禁城を目前にしてまず思い浮かんだ感想は、「映画で観た、ラストエンペラーの世界だ!」というもの。
映画「ラストエンペラー」で描かれたコオロギのシーンが連想されるとともに、この地が歩んだ長い歴史に想いが至り、胸がいっぱいになります。
溶けそうなほどの日差しと熱気の中を歩き続け、すっかり日焼けしてしまいましたが、どこまでも続く宮殿の屋根や、幾重にも張り巡らされた迷路のような道々の様子は、本当に素晴らしくて、圧巻で…。
敷地を抜けて背後の故宮博物院を振り返ったときには、「これほどのもの、この国にしか造れないな」と感じたのでした。
万里の長城に立ち、感無量のひと時を過ごす
紫禁城と並んで絶対に訪れたかった、「万里の長城」にも足を運ぶことができました。
説明不要かも知れませんが、万里の長城は世界の古代建築の中で最も壮大にして、人類史上最大の建造物とも言われている中国世界遺産の代表格です。
もう少し掘り下げて概要をお伝えしますと、長城西端の嘉峪関から東端の山海関までの総延長は6,352km。
これは実に北海道から沖縄まで、日本列島を囲む距離に相当します。
長城は北方騎馬民族の侵入を防ぐべく、紀元前7世紀には中国各国で築かれていたそうですが、約2200年前に中国を初めて統一した秦の始皇帝が各国の皇帝をつなぎ、現在の長城の基礎を作り上げました。
現在のかたちになったのは、14世紀・明の時代。
約2000年にわたり、数百万人の農民たちと30万の兵士、膨大な量の煉瓦と石とで造られた、気が遠くなるほど壮大なプロジェクトだったのです。
今回の旅で訪れるのは、北京郊外にあり、観光地として最も整備が進んでいる「八達嶺長城(ハッタツレイチョウジョウ)」。
さすがに全貌を拝むことは叶いませんから、長城を形成する一部分を見学するかたちですね。
街の中心部から観光バスに乗って八達嶺長城に向かっていると、窓の外には早くも長城が姿を現しており、山肌を縫うようにして、どこまでも連なっている様子が確認できます。
この段階でも、感動で心が震えました。
ほどなくして観光バスは、八達嶺長城に到着。
見渡す限り、どこまでも続く長城の荘厳な佇まいに、ただただ息をのみます。
これでも長城のほんの一部分に過ぎないなんて、本当に信じられません。
実際に自らの足で踏みしめてみると、長城の美しさ・壮大さ・歴史の重みといったものがよりストレートに感じられ、圧倒されてしまいました。
日本が縄文時代だった頃から、このような建造物が作られていたなんて!
生で万里の長城を見てみて、その功罪などについては詳しくありませんが、「これって、人類が残した足跡で一番凄いのでは…?」と素直に感じました。
いやもう本当に、一生に一度は訪れる価値のある場所ですね。
今回ここに来ることができて、良かったです。
大都会ながら、素朴な味わいも残す北京の街
見どころの多い北京の中でも特に有名なスポットをまずは紹介しましたが、何気ない街の風景にも、心惹かれるものがありました。
例えば宮殿の石畳に、水を含ませた筆で字を書いている男性の姿などは、特に印象的でしたね。
どこにでもいそうなおじさんが、特にかしこまった風でもなく、サラサラ~っと水で漢字をしたためているのです。
見事な文字はそのうち日の光によって蒸発し、跡形もなく消えてしまうのでしょうが、肩ひじを張らない“日常の中の芸術”といった趣が感じ良く、しばし足を止めて見入ってしまいました。
また北京に残る古い町並みを散策して回るのも、楽しかったですね。
無造作に干された色とりどりの布団や、道端に置かれた鳥かご、日焼けして色あせた漢字の看板などが、狭い路地に味わいを添えており、眺めているとワクワクしてきます。
許可を取って一軒の民家にお邪魔すると、台所で豪快に野菜を切るお母さんの横で、気持ちよさそうに眠る白猫の姿が。
木の椅子に、中国風の赤いクッションを敷いてもらい、安心しきっている様子です。
異国の地でありながら、どこか懐かしく、心が落ち着く風景…。
とはいえ一歩路地を抜けると、そこには数えきれないほどの人と車が行き交い、高層ビルが立ち並んでいるわけですから、面白いですよね。
そう、基本的に北京は大都会なのです!
ただ急速な近代化の波にのまれながらも、とてつもなく古い時代の史跡や、そこに暮らす人々の、のどかな営みといったものも確実に残っていて。
北京という街がたたえる多彩な表情に、すっかり魅了されてしまいました。
街を案内してくれたガイドさんが「日本の文化は、中国文化の支流」と話していましたが、やはり文化的・歴史的に影響を受けている部分が多いために、これほど惹きつけられるのでしょうか。
そういったわけで、中国という国の“スケールの大きさ”をまざまざと見せつけられるとともに、何だかほっとする街の人々の息遣いにも触れることができた、今回の旅でした。
そのパワフルさゆえに中国を訪れる際には、ある程度の心づもりがいるとも感じているのですが、行けば必ず素晴らしい思い出を作ることができますね。
なお北京では他の観光スポットにも足を運んだので、機会があれば、改めて紹介させてください^^