遺跡好きということもあり、ずっと行ってみたかったカンボジアのアンコール・ワット。
タイのアユタヤを訪れた際に、横にいた日本人旅行者の方から「アユタヤが好きなら、絶対にアンコール・ワットも行くべき。すごく感動するはず」と言われて以降、想いはますます募るばかりでした。
そして次の年の夏、まとまった休暇を取得することができて、念願のカンボジア旅行が実現したのです!
結論から申し上げますと、訪れた遺跡は期待以上に素晴らしく、現地では言葉にできないほどの感動に包まれました。
一つひとつの見どころを少しでも掘り下げてお伝えしたいので、今回の記事ではアンコール遺跡群の中でも「アンコール・トム」「タ・プローム」「アンコール・ワット」の3つに焦点を当て、その魅力に迫りたいと思います。
一路、シェムリアップへ!
クメールの人々がたたえる穏やかな微笑みが印象に残る国、「カンボジア」。
旅のハイライトは何と言っても、メコン川とトンレサップ湖の恵みによって繁栄を極めたアンコール王朝の面影を今に伝える世界遺産、「アンコール遺跡群」でしょう。
遺跡群への起点となる「シェムリアップ」は、首都プノンペンから北西に約300km離れた場所に位置する素朴で小さな町。
とはいえ近年は高級ホテルの建設が相次ぐと同時に、外国人観光客向けの雑貨ショップなども増えてきて、町は“遺跡を楽しむリゾート”に変貌を遂げています。
実を言うと私がシェムリアップを訪れたのはもうかなり前のことで、定期的にカンボジアを訪れている友人曰く、そのころと比べても町の様子は随分と様変わりしているそう。
そのため現状とは少々乖離が見られるかも知れませんが、今回は私が目にした“遺跡の町”の様子について、ありのままをお伝えしていきます。
さて「アンコール遺跡群」という呼称からも分かるように、東南アジアの文化的中心であった古代カンボジアの遺跡は、大小合わせて700以上もあると言われています。
有名なアンコール・ワットも、遺跡群の中のごく一部に過ぎません。
ベトナム経由でシェムリアップの地に降りたった私はまず、アンコール遺跡公園内にある主な遺跡であればどこでも入場することできる、「アンコールパス」を購入。
パスの表には証明写真が印刷されており、その見た目はテーマパークのフリーパスさながらです。
現地で日本語が話せる男性ガイドと合流し、まずは“大きな都市”という意味を持つ遺跡「アンコール・トム」へ。
アンコール・トムはクメール王朝が最盛期を迎えた13世紀の初めに完成した城砦都市であり、城壁と堀に囲まれた3km四方の土地の中には、数々の遺跡が点在しています。
堀の外側で車を降り、蛇神ナーガを抱えた神々と阿修羅が“綱引き”をしている何とも興味深い橋を渡ったあと、巨大な四面菩薩像が彫られた「南大門」をくぐって、遺跡の内部に向かいます。
しばらく歩を進めると、アンコール・トム最大の見どころである、四面に観音菩薩とされる人面が彫られた塔が立ち並んだ仏教寺院、バイヨンが見えてきました。
神秘的でありながら穏やかな笑みをたたえた観音像の表情は、“クメールの微笑み”と称されており、訪れる者の心を掴んで離しません。
私はここで絵描きの男性から、筒に入った観音菩薩の絵を一枚買い求めたほか、民族衣装を着た少女たちと記念撮影をして、旅の思い出としました。
更に奥へ進むと、かつて王の閲兵や儀式・式典に使われたという広大なテラスと広場が。
台座に象が彫られた「象のテラス」に座り、象の鼻の横に足を並べて、写真を撮ってもらいます。
壮大且つ荘厳でありながら、どこか愛らしいくもあるアンコール・トムの神々。
またアンコール・トムという遺跡全体がダイナミックな魅力をたたえているため、アンコール遺跡群の中でここが一番好きという方も多いかも知れませんね^^
タ・プロームと、念願のアンコール・ワットを巡る
後ろ髪を引かれながらもアンコール・トムを後にして、次に足を運んだのはやはり人気の高い遺跡「タ・プローム」。
“梵天の古老”を意味するタ・プロームは、アンコール・トムの東側に位置する寺院の遺跡であり、ジャヤーヴァルマン7世が母を弔うために建てたと伝えられています。
ガジュマルの浸食がとても激しく、木と遺跡が一体化したような外観をしているのですが、その様子がまた何とも言えず魅力的で、胸に迫りますね。
聞けば修復計画の方針を決定するに当たり、このガジュマルが寺院を破壊しているのか、あるいは崩れつつある遺跡を支えているのかという議論がなされているとか。
しかし無責任に言ってしまえばガジュマルの浸食こそが、現在のタ・プロームをタ・プロームたらしめている気もして、どのような方針を打ち立てることが正解なのか、非常に難しいと感じます。
これは軍艦島のような世界遺産や廃墟全般に言えることかも知れませんが、遺跡として守り修復し、永く未来に伝えたいという視点がある一方で、滅びゆく姿が美しいという“破滅の美学”のようなものに心奪われる側面も、否定はできないでしょう。
そんなことを考えながら、まるで冒険者や探検家になった気分で、タ・プロームの魅力を堪能しました。
というのも、タ・プロームは前述のようなガジュマルとの絡みもあり、発見当初の様子に近いかたちで保存されているのです。
別名”締め殺しの木”とも言われるガジュマルが長い年月をかけて寺院を締め付けている様子を、寺院の荒廃ぶりと併せて間近で見ると、この地にはまだ人の手が及んでいないのではないかと錯覚してしまいますね。
自ら発見した未開の地にいよいよ踏み入っていくような高揚感に、支配されるのです。
ちなみにタ・プロームを覆うガジュマルは樹齢300年にもなると言われ、現在も少しずつ成長しているそう。
露出した木の根元だけでも私の体をそっくり包んでしまうほど巨大で、その荒々しくも力強い姿に、打ちのめされてしまいます。
映画「トゥーム・レイダー」の撮影場所に選ばれたというのも、納得ですね。
その後はいよいよ、クメール美術の集大成ともいえる「アンコール・ワット」へ。
12世紀の初めに30年もの歳月をかけて建造されたというこちらの寺院は、ヒンズー教の宇宙観を表現したとされており、広大な空間はエキゾチックなパワーに満ち溢れています。
4つの聖なる池を取り囲む十字回廊には、かつてこの地を訪れたという森本右近太夫の“落書き”が。
こちらの落書きも実際に見てみたいとずっと願っていたので、どのような気持ちでこれをしたためたのか、先人の心情に想いを馳せながら、しばしその場に立ち尽くしてしまいました。
回廊の壁画は、どれも見事なもの。
神々の像一体一体に個性があり、また躍動感があって、今にも動き出しそうです。
天高くそびえる第3回廊の姿は、圧巻。
アンコール・ワットを訪れることができる時代の日本人に生まれついたことに、感謝の気落ちが溢れました。
以上、アンコール遺跡群の中でもとりわけ知名度の高い3つのスポットについて、まとめてみました。
しかしまだまだカンボジアの見どころは尽きず、私の旅も始まったばかりです。
とりあえず、遺跡巡りだけにガッツリ時間を割くスケジュールを組んで良かった…。
それほどアンコール遺跡群は広大で、見ごたえがあるのです。
その他の遺跡についても他の記事で紹介する予定ですから、是非お付き合いください!